江戸時代からの福寿草銘鑑の検証


江戸時代の福寿草銘花の探索結果

平成福寿草の会では、懸案だった江戸時代からの銘品が現在どのくらい現存しているかを検証してみました。
そして草案を下記要項にて取りまとめてみました。
江戸時代から引継がれた銘品の参考資料として、福寿草の大家である中村農園の中村種次郎氏が大正期に
発行した銘鑑に掲載されている50種を江戸末期からの伝承品種と断定し銘品解説の文言を頼りに考察。
そして鑑定を次の3項を基準に判定しました。
 @種を付けない品種で解説の文言と一致するものを江戸時代より引継がれた古典種とする
 A種が付き実生繁殖が可能な品種で花容が解説の文言とほぼ一致する品種は古典銘品とする
 Bこの参考資料の銘鑑以後に発表された品種は銘品とする
検証の結果、江戸時代からの継承品種として存続する古典種は、玉孔雀、三段咲、小菊、金紫、金世界、紅撫子、
撫子、金采、昼夜牡丹、日月星、紫雲、福寿海以上の12品種と断定しました。
これらの古典種は千重咲や不稔の品種なので株分けか根伏せなどで現存に至ったと思われます。
古典銘品での現存は17種、不明が8種、絶種が13種。
金采と福寿海は条件により1〜2個の種を付ける事がありますが,大半は発芽しないので問題になるような数ではないと思います。

寿が絶種となっていますが、現存している寿の花容は解説の文言に一致しません。
現存する寿は、咲き出しの1〜2花は中輪(3〜4p)で、後の花は菊咲の小輪に咲きます。
そして昔からの愛好者は、現在流通している寿の事を小菊といいます。
小菊は銘鑑の解説の文言は万重咲(千重咲)となっていて、故・中村隆之氏はこの花を父・文治郎氏の作出と書いていますが、
昭和40年代に販売されていた小菊は一重の小花で、現在流通している寿の花容の特徴は小菊そのものです。
つまり、現在流通している寿を当時の小菊とすると銘鑑の文言と一致します。
上記の事から小菊は現在の寿として現存とし、寿を絶種としました。

金紫は裏紅撫子として流通している中に混じっていたり、撫子の中にも混じっていましたが、現在ではほとんど見かけません。
蕾は赤紫で開花すると花弁裏にも紫が入り大輪、八重咲きなので撫子とは容易に区別ができます。

紫雲や昼夜牡丹は、昔販売されていた中に種を付けるものと不稔ものが混合されていました。継承種は種を付けません。

※不明品種はどこかで生き残っているかもしれません。不明品種が1つでも発見されますよう皆様のご協力をお願いします。

                                                                 平成福寿草の会



                 福寿草銘鑑(中村農園 中村種次郎氏発行 *原文のまま転載)

品種 解   説 平成福寿草の会に
よる検証
現在 種子の有無
銀世界 純白光沢あり一重大々輪。優雅なる貴重品なり一名大田白と云う。 絶種  
白牡丹 鮮美なる純白八重牡丹形大々輪。 絶種  
車白 純白一重大輪花容風車の如き珍美なる逸品。 絶種  
紫雲 表白裏紫一重大々輪雅品なり。 現存 不稔
辨天 水色にて光沢あり一重大々輪。 水色は淡黄色 現存 種子は付く
日之本 鮮美なる橙紅色光沢あり八重大輪優美なる秀逸品。 絶種  
秩父紅 濃紅花弁円形八重大々輪。 現存 種子は付く
緋の海 純紅色光沢あり八重大々輪定評ある秀逸花。一名秩父真紅とも云う。 現存 種子は付く
梅紅 淡紅色光沢あり八重大輪。 絶種  
紅撫子 濃紅八重弁先裂けて撫子咲大々輪鮮美なる秀逸花。 現存 不稔
小波錦 濃緑地に純黄縞紋あり万重大輪珍美なる最優品。 絶種  
玉孔雀 濃緑縮あり内弁細くして三つに裂け万重咲き奇品。 現存  
天緑 濃緑葉状をなし八重大輪花芯黒色なるもの茎葉と判別なし難きものあり。 不明  
寿 黄金色万重菊咲大輪。一名長島とも云う。 絶種  
小菊 黄金色万重菊咲中輪晩咲。 現在の『寿』
として現存
 
三段咲 淵黄金中濃緑内弁先割け羽状黄金色細弁万重極大々輪最も優美なる逸品。 現存  
万福 黄金色一花二段に重り咲き各二重珍品榊原子爵の作出品。 絶種  
七変化 黄金色万重八重一重細弁等変化多し。 現存 種子は付く
折鶴 黄金色一重細弁にて内へ折れる珍奇優雅なる貴品。 絶種  
爪折笠 黄金色一重細弁花弁の先端内へ折る折鶴と並ぶ最優品。 現存 種子は付く
金紫 表黄金色裏紫八重撫子咲大々輪。 現存 不稔
金世界 表裏純黄金色八重極大々輪優秀花なり。 現存 不稔
桃太郎 黄金色極細弁にて羽毛状万重大輪珍奇なる美花。 絶種  
羽衣 黄金色弁細長一重大輪。 現存  
錦襟 黄金色八重細弁大々輪極優しき花。 現存 種子は付く
隠蓑  黄金色一重弁細く先割れ弁少し奇品。 現存 種子は付く
菅原 黄金色一重細弁先円く弁少し珍品なり。 現存 種子は付く
七々子 花弁無く蕋咲にて黄色の奇品。 現存 種子は付く
魚之子 花弁最小黄色蕋咲の珍品。 現存 種子は付く
撫子 黄金色一重弁先裂けて撫子咲大々輪優雅な花なり。 現存 不稔
唐子 黄金色細弁万重八重一重あり大々輪優麗な花。 絶種  
金采 黄金色八重細弁の大輪。 現存 数粒の種が
付くこともある
昼夜牡丹 黄金色裏紫紅色八重牡丹咲大々輪。 現存 不稔
御所 黄金色光沢あり弁劍形八重大輪雅品なり。 現存 種子は付く
金華山 黄金色二重光沢あり極大々輪優秀花。 不明  
日月星 黄金色八重大輪弁短かく裏の先端に黄の星あり。 現存 不稔
桔梗 黄金色一重桔梗形大々輪鮮美なる逸品。 絶種  
牡丹 金紅色裏金紫色二重牡丹咲大輪。 絶種  
七福神 黄金色二重七花固り開く奇品。 現存 種子は付く
天守 黄金色光沢あり二重大輪優雅な花。 不明  
見返獅子 黄金色裏濃紫二重大々輪逸品なり。 現存  
玉手箱 黄金色花弁広く八重大々輪鮮麗な優品。 現存 種子は付く
福寿海 黄金色八重大輪優雅なり福寿草の普通種なり。 現存 数粒の種が
付くこともある
広楽 黄金色裏金紅色二重牡丹形大輪雅品。 不明  
秩父草 黄金色一重中輪。 現存 種子は付く
青梅草 黄金色一重光沢あり中輪鮮美なり。 現存 種子は付く
石竹 表水色裏ビロード色二重大々輪雅麗な優逸花。 絶種  
大和 黄金色弁先割け撫子形可憐な花。 現存 種子は付く
初光 黄金色二重中輪極早咲。 不明  
千草 黄金色一重中輪細芽族生す 不明  


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